映像・画質関連用語
4K/8K
- 4K: 3840×2160画素(約829万画素)の超高精細映像フォーマット。フルHD(1920×1080)の4倍の解像度を持つ。UHD-1とも呼ばれ、現在の業務用カメラの主流となっている。Netflix、YouTube、放送局などで広く採用されており、細部まで鮮明な映像表現が可能
- 8K: 7680×4320画素(約3,317万画素)の次世代超高精細映像フォーマット。4Kの4倍、フルHDの16倍の解像度。UHD-2とも呼ばれる。NHKの8K放送や映画制作の一部で使用されているが、データ量が膨大なため特殊用途に限られる
HDR(High Dynamic Range)
従来のSDR(標準ダイナミックレンジ)では表現できない明暗差の大きいシーンを、白飛びや黒つぶれを抑えて自然に撮影する技術。人間の目に近い視覚体験を実現する。HDR10、HDR10+、Dolby Visionなどの規格があり、10bit以上の色深度が必要。逆光シーンや夕焼け、室内外の明暗差が激しい場面で威力を発揮する
色域(Color Gamut)
カメラが撮影・再現できる色の範囲を示す。より広い色域ほど豊かな色表現が可能
- Rec.709: HD映像の標準色域。sRGBとほぼ同等
- Rec.2020: 4K/8K映像の標準色域。Rec.709より約75%広い色域を持つ
- DCI-P3: デジタル映画館で使用される色域。Rec.709より約25%広い 色域が広いほど鮮やかで自然な色再現が可能だが、対応モニターでの確認が必要
ビットレート
1秒間に記録されるデータ量をbps(bits per second)で表す。高ビットレートほど高画質だが、ファイルサイズが大きくなりストレージ容量を圧迫する。4K撮影では100-400Mbps、フルHDでは25-100Mbps程度が一般的。編集時の処理負荷やネットワーク配信時の帯域も考慮して設定する
コーデック
映像データの圧縮・展開方式。圧縮効率、画質、編集適性のバランスで選択
- H.264(AVC): 汎用性が高く、多くの機器で再生可能。ファイルサイズが小さい
- H.265(HEVC): H.264の約2倍の圧縮効率。4K撮影で威力を発揮
- ProRes: Apple開発の編集向けコーデック。高画質で編集時の処理が軽い
- XAVC: ソニー開発の業務用コーデック。高画質と編集適性を両立
フレームレート
1秒間の映像フレーム数をfps(frames per second)で表す
- 24fps: 映画の標準フレームレート。シネマティックな質感
- 30fps(29.97fps): 日本の放送標準。自然な動き
- 60fps(59.94fps): スポーツ中継などで使用。滑らかな動き
- 120fps以上: スローモーション撮影用。再生時に1/4、1/8速度で美しいスロー映像を作成
レンズ・光学系用語
焦点距離
レンズの光学中心から撮像素子までの距離をmm単位で表す。画角と被写界深度に直接影響
- 広角(10-35mm相当): 広い範囲を撮影、遠近感強調、被写界深度深い
- 標準(35-85mm相当): 人間の視覚に近い自然な画角
- 望遠(85mm以上相当): 遠くの被写体を大きく、背景ボケ効果、被写界深度浅い 業務用カメラでは20倍、30倍ズームなど高倍率が一般的
F値(絞り値)
レンズの明るさを示す数値。焦点距離÷有効口径で算出。小さいほど明るく、被写界深度が浅くなる
- F1.4-F2.8: 明るいレンズ。暗所に強く、美しいボケ効果
- F4-F5.6: 標準的な明るさ。バランスの良い描写
- F8-F11: 風景撮影などで全体にピントを合わせたい場合 絞りすぎると回折現象により解像度が低下するため注意が必要
被写界深度
ピントが合って見える範囲の前後の距離。浅いとボケ効果が強く、深いと全体にピントが合う
- 影響要素: F値(小さいほど浅い)、焦点距離(長いほど浅い)、被写体距離(近いほど浅い)、センサーサイズ(大きいほど浅い)
- 活用: ポートレートでは浅く、風景では深く設定するのが一般的
手ブレ補正(OIS/EIS)
- OIS(光学式): レンズ内またはセンサーを物理的に動かしてブレを補正。自然な補正効果で画質劣化なし。望遠撮影や手持ち撮影で威力を発揮
- EIS(電子式): デジタル処理でブレを補正。画角が若干狭くなるが、強力な補正効果。歩き撮りなど激しい振動に有効
- ハイブリッド: 光学式と電子式を組み合わせて最大の補正効果を実現
ズーム比
望遠端と広角端の焦点距離の比率。20倍ズーム(例:10-200mm)なら、望遠端が広角端の20倍の焦点距離。高倍率ほど被写体に近づけるが、手ブレが目立ちやすく、F値も暗くなる傾向。業務用では20-30倍が一般的で、放送用では100倍を超えるものもある
撮影機能・設定用語
露出
映像の明るさを決める3要素の組み合わせ
- シャッタースピード: 光を取り込む時間
- 絞り(F値): 光を取り込む量
- ISO感度: センサーの光感度 適正露出では白飛び・黒つぶれがなく、自然な明るさを実現。マニュアル、絞り優先、シャッター優先、プログラムオートなどのモードで制御
ISO感度
撮像センサーの光に対する感度。数値が2倍になると感度も2倍になる
- 低感度(ISO100-400): ノイズが少なく高画質だが、明るい環境が必要
- 中感度(ISO800-3200): 室内撮影などで使用。ノイズと画質のバランス
- 高感度(ISO6400以上): 暗所撮影可能だが、ノイズが増加 最新の業務用カメラでは ISO25600以上でも実用的な画質を実現
シャッタースピード
センサーが光を受ける時間。分母で表記(1/60秒など)
- 高速(1/250秒以上): 動きを止める。スポーツ撮影に適用
- 標準(1/60秒): フレームレートの2倍が基本。自然な動き
- 低速(1/30秒以下): 意図的なモーションブラー効果 映像撮影では180度シャッタールール(フレームレートの2倍の分母)が一般的
ホワイトバランス
光源の色温度(K:ケルビン)に合わせて色合いを調整する機能
- 太陽光(5600K): 屋外の標準設定
- タングステン(3200K): 白熱電球下での撮影
- 蛍光灯(4000K前後): 事務所などの蛍光灯下
- オート: カメラが自動判定
- マニュアル: ホワイトバランスカードで手動設定 正確な色再現のため、撮影環境に応じた設定が重要
ゲイン
映像信号を電気的に増幅する機能。デシベル(dB)で表記
- 0dB: 基準レベル。最も高画質
- +6dB: ISO感度2倍相当。若干ノイズ増加
- +12dB以上: 暗所撮影可能だが、ノイズが目立つ ISO感度とは別の概念だが、結果的に同様の効果。業務用カメラでは細かく調整可能
ガンマ補正
映像の階調特性(明暗の変化カーブ)を調整する機能
- 標準ガンマ: 一般的な視聴環境に適した設定
- シネマガンマ: 映画的な質感を演出
- S-Log: ソニーのログ撮影モード。編集時に柔軟な調整が可能
- C-Log: キヤノンのログ撮影モード ログ撮影は一見コントラストが低く見えるが、編集時に豊かな階調調整が可能
音声関連用語
XLR端子
プロ用音声機器で使用される3ピン(または5ピン)の音声入力端子。ノイズに強いバランス接続が可能で、業務用マイクの標準接続方式。ロック機構により確実な接続を実現し、長距離配線でも音質劣化が少ない。ピン1:グランド、ピン2:ホット(+)、ピン3:コールド(-)
ファンタム電源
コンデンサーマイクに電源を供給する機能。通常+48Vの直流電圧をXLRケーブル経由で供給。コンデンサーマイクは感度が高く高音質だが、動作に電源が必要。ダイナミックマイク使用時は通常オフにする。間違った設定でも機器損傷は稀だが、適切な設定が重要
オーディオレベル
音声信号の強さをdBu、dBV、dBFS等で表示。適切なレベル設定により高品質な録音を実現
- -20dBFS~-12dBFS: 一般的な録音レベル
- -6dBFS以上: 音割れの危険性
- -40dBFS以下: ノイズが目立つ可能性 VUメーターやピークメーターで常時モニタリングし、音割れを防ぐ
AGC(Automatic Gain Control)
音声レベルを自動調整する機能。周囲の音量に応じてゲインを自動変更し、一定の録音レベルを維持。便利だが、静寂時にノイズを拾い上げたり、不自然な音量変化を起こす場合があるため、プロ用途では手動設定が推奨される
記録・接続用語
SDカード
映像を記録するフラッシュメモリーカード。容量と転送速度の規格が重要
- 容量: 32GB(SDHC)、64GB以上(SDXC)
- 速度クラス: Class10(最低10MB/s)、UHS-I/II、V30(最低30MB/s)、V60(最低60MB/s)、V90(最低90MB/s) 4K撮影にはV30以上、高ビットレート撮影にはV60以上が推奨。複数枚での同時記録(デュアル記録)対応機種も多い
CFexpress
次世代高速メモリーカード。PCIe接続により従来のSDカードより高速転送が可能
- Type A: コンパクトで中程度の速度
- Type B: 大容量・高速転送。8K撮影に対応
- Type C: 最高速度だがサイズが大きい 8K撮影や高フレームレート撮影など、大容量データの記録に必須
HDMI出力
外部モニターや録画機器にデジタル映像を出力する端子
- HDMI 1.4: フルHD、4K/30p対応
- HDMI 2.0: 4K/60p対応
- HDMI 2.1: 8K/60p、4K/120p対応 業務用では4:2:2 10bit出力やタイムコード埋め込みなど、高度な機能を搭載
SDI(Serial Digital Interface)
業務用映像機器の標準デジタル映像伝送規格。同軸ケーブルで長距離伝送が可能
- HD-SDI: HD映像対応(1.5Gbps)
- 3G-SDI: フルHD/60p対応(3Gbps)
- 6G-SDI: 4K/30p対応(6Gbps)
- 12G-SDI: 4K/60p対応(12Gbps) 放送局やスタジオでの標準接続方式。ノイズに強く、プロ用機器との互換性が高い
LAN/Wi-Fi
ネットワーク経由での機能
- ライブ配信: RTMP、SRT等のプロトコルで直接配信
- 遠隔制御: スマートフォンやタブレットからカメラ操作
- ファイル転送: 撮影データの自動アップロード
- 時刻同期: NTPサーバーとの時刻同期 最新機種では5G対応やIP制御機能も搭載
制御・操作用語
三脚座
カメラを三脚に固定するためのネジ穴。1/4インチ(小)と3/8インチ(大)の規格がある。業務用カメラは通常3/8インチネジを採用。カメラの重量バランスを考慮した位置に配置され、安定した撮影を実現。一部機種では前後にスライドして重心調整が可能
ハンドル
手持ち撮影時のグリップ部分。エルゴノミクス(人間工学)に基づいた設計で長時間撮影でも疲労を軽減。録画ボタン、ズーム操作、フォーカス操作等の主要機能を配置。取り外し可能な機種もあり、撮影スタイルに応じてカスタマイズ可能
液晶モニター
撮影画面を確認するディスプレイ。3-5インチが一般的
- チルト機能: 上下角度調整。ローアングル・ハイアングル撮影に対応
- 回転機能: 180度回転でセルフィー撮影や確認が可能
- タッチパネル: 画面タッチによる直感的操作
- 高輝度: 屋外撮影でも視認性を確保(1000nit以上) 色再現性や視野角も重要な要素
ビューファインダー
接眼して撮影画面を確認する表示装置
- 電子式(EVF): 高解像度OLED/LCDディスプレイ。リアルタイム映像表示
- 光学式: レンズ経由の実像を直接確認。バッテリー消費なし
- 視度調整: 個人の視力に合わせた調整機能
- アイセンサー: 接眼を自動検出してモニターから切り替え 明るい屋外では液晶モニターより見やすい
フォーカスリング
手動でピント調整を行うレンズのリング。回転角度とピント移動量の関係(フォーカススロー)が重要。プロ用レンズでは滑らかで精密な調整が可能。フォローフォーカス(外部フォーカス制御装置)との組み合わせで、より精密なピント操作を実現
ズームリング
手動でズーム調整を行うレンズのリング。一定の操作力で滑らかなズーム操作が可能。電動ズームと併用できる機種もある。ズーム速度を一定に保つことで、プロフェッショナルな映像表現を実現
映像技術用語
インターレース/プログレッシブ
- インターレース(i): 奇数行(1,3,5…)と偶数行(2,4,6…)を交互に表示する従来のテレビ方式。1080i等で表記。動きの激しいシーンで櫛状のノイズ(コーミング)が発生する場合がある
- プログレッシブ(p): 全ての走査線を順次表示する方式。1080p等で表記。現在の主流で、PC表示やWeb配信に適している。動きが滑らかで高画質
タイムコード
映像の時間位置を示すコード。HH:MM:SS:FF(時:分:秒:フレーム)形式で表示
- LTC(Linear Time Code): 音声信号として記録
- VITC(Vertical Interval Time Code): 映像信号に埋め込み 編集時の同期や、複数カメラの映像合成で必須。業務用カメラでは標準搭載
ジェニロック(Genlock)
複数カメラの同期信号を統一する技術。スタジオやライブ中継で複数カメラを切り替える際に、映像の乱れを防ぐ。基準信号に全カメラを同期させることで、シームレスな映像切り替えを実現
LUT(Look Up Table)
色調整やカラーグレーディング用の変換テーブル。入力値に対する出力値を事前に定義したデータ
- 3D LUT: RGB各色を3次元で変換。より複雑な色変換が可能
- 1D LUT: 各色を独立して変換。ガンマ補正等に使用 撮影時に適用してモニタリングしたり、編集時に適用して最終的な色調を決定
撮影モード・用途別用語
シネマモード
映画のような質感で撮影するモード
- フレームレート: 24fps(23.98fps)設定
- ガンマカーブ: シネマ用の階調特性
- 色調: フィルムライクな色再現
- シャッター角度: 180度(1/48秒) デジタル映画制作やムービー作品制作で使用
ドキュメンタリーモード
長時間撮影や記録映像に適した設定
- バッテリー効率: 省電力設定
- オート機能: 露出やフォーカスの自動追従
- 音声: 環境音の自動レベル調整
- 記録: 長時間記録に適したコーデック選択 取材や記録映像撮影で威力を発揮
スポーツモード
高速な動きを撮影するのに適した設定
- フレームレート: 60fps以上の高フレームレート
- シャッタースピード: 高速設定で動きを止める
- フォーカス: 高速・高精度な追従性能
- ズーム: 素早い操作に対応 サッカー、野球等のスポーツ中継で使用
ポートレートモード
人物撮影に適した設定
- 被写界深度: 浅めに設定して背景ボケを演出
- フォーカス: 顔認識・瞳フォーカス機能
- 色調: 肌色を美しく再現する設定
- ライティング: 逆光補正機能 インタビューや人物中心の撮影で使用
ナイトモード
暗所撮影に適した設定
- ISO感度: 高感度設定(ノイズ処理も強化)
- シャッタースピード: やや遅めで光量確保
- ノイズリダクション: 強めの設定
- 赤外線: IR撮影機能(対応機種のみ) コンサートや夜景撮影で威力を発揮
業界標準・規格用語
SMPTE(Society of Motion Picture and Television Engineers)
映像技術の標準化団体および規格の総称
- タイムコード規格: SMPTE-12M等
- 映像フォーマット: 各種解像度・フレームレートの標準
- 色空間: 色再現の標準規格
- インターフェース: SDI等の接続規格 ハリウッドや放送業界で広く採用
Rec.709/Rec.2020
ITU-R(国際電気通信連合)による色域・映像品質の国際標準規格
- Rec.709: HD映像の標準。現在最も普及している規格
- Rec.2020: 4K/8K映像の標準。より広い色域とHDRに対応 放送局やストリーミングサービスで採用
NTSC/PAL/SECAM
テレビ放送の映像方式
- NTSC: 日本・北米等で採用。29.97fps、525本走査線
- PAL: ヨーロッパ等で採用。25fps、625本走査線
- SECAM: フランス・ロシア等で採用。PALの変形 国際的な映像制作では両方式への対応が必要
UHD(Ultra High Definition)
4K/8K映像の総称
- UHD-1: 4K解像度(3840×2160)
- UHD-2: 8K解像度(7680×4320) 従来のHD(High Definition)に対する次世代高精細映像の標準
UHDTV
Ultra High Definition Television。4K/8K放送の技術標準
- フレームレート: 24p/25p/30p/50p/60p/100p/120p対応
- 色深度: 10bit/12bit対応
- 色域: Rec.2020対応
- 音声: 22.2ch音響まで対応 次世代放送の技術仕様を定義
この用語集は業務用ビデオカメラの専門用語を詳細に解説したものです。技術の進歩により新しい用語や規格が追加される場合があります。各用語の理解により、より効果的な映像制作が可能になります。
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